石巻マンガロードの「はじまり」と「これまで」

石ノ森章太郎の代表作の一つである『サイボーグ009』は1964年に連載開始され今年で60周年を迎えます。石巻にサイボーグ009こと島村ジョーのモニュメントがお目見えしたのは1999年7月30日。石巻に数あるモニュメントの中でも、一番初めに誕生したのがこのサイボーグ009でした。
ここでは、石巻マンガロードの今に至るまでのあゆみをご紹介します。

立町商店街にサイボーグ009が登場

 石巻駅を向いて、石巻を訪れた人たちを迎えるように立つサイボーグ009。彼が立つ立町商店街の入口にあたるこの場所には元々交番がありました。現在は「立町ポケットパーク」と呼ばれ親しまれています。石ノ森萬画館がオープンする2年前の1999年7月30日、サイボーグ009は多くの市民に見守られ誕生しました。その後、この009を起点にさまざまなモニュメントが石巻の街なかに生まれていくこととなります。

石ノ森萬画館オープンに向けて加速度的にモニュメントが設置!でも…

 2001年4月1日、JR石巻駅前に2体目となるサイボーグ003ことフランソワーズ・アルヌールが設置され、その除幕とともに「石巻マンガロード」が誕生しました。マンガロードにはサイボーグ003に加え、がんばれロボコン、仮面ライダー1号、さるとびエッちゃんのモニュメントが設置されました。また、キャラクターが描かれている石製のベンチや郵便ポスト上の小型モニュメント、街路灯には500枚ものフラッグが取り付けられ、市役所や商店街が一体となって街なかは一気にマンガムード一色に。3か月後の7月23日に控えた石ノ森萬画館のオープンへの機運も高まっていました。

 ところが、そんなお祝いムードに水を差す出来事が起こってしまいます。マンガロードが誕生したなんと次の日、取り付けたフラッグが盗まれ、設置したばかりのロボコンのアンテナが折り曲げられてしまう事件が発生しました。これには商店街の人たちも残念、無念の表情。「マンガがまちに受け入れられていくには、やはり時間がかかるのか」と関係者一同実感したのでした。

賑わうまちなか、しかしまた災難が…

しかしそんな心配をよそに、2001年7月23日に石ノ森萬画館がオープンすると、多くの方が石巻を訪れるようになり、マンガロードは家族づれやファンの人たちで賑わいを見せるようになります。マンガロードでは商店の人たちによってマンガをテーマにしたさまざまなイベントが行われるようになり、2010年3月にはさらに13体のモニュメントが追加されました。仮面ライダーV3、アカレンジャー、佐武と市など石ノ森先生ならではの多彩なキャラクターが姿を見せます。他にもサイボーグ001、004、005、006、007、008の6体も追加となり、サイボーグ戦士たち全員が石巻マンガロードに集結しました。

ところが、またしてもマンガロードに苦難が襲いかかります。モニュメントが追加された翌年、2011年3月11日に発生した東日本大震災です。 マグニチュード9.0、震度6強の地震は建物を崩壊させ、発生した巨大な津波は北上川から溢れ、泥を含み船や建物を巻き込んで設置したばかりのモニュメントも飲み込んでいき、市街地に甚大な被害を与えたのです。

震災後間もなくして、全国から多くのボランティアが石巻に駆けつけてくださり、がれきや泥で埋め尽くされたまちは少しずつきれいになっていきました。傷ついたモニュメントもボランティアの手によって補修され、元の姿となり、石巻に訪れる人々を出迎える存在となっていきます。震災前からの定期的な清掃作業などで大切にされてきたまちのシンボルは、津波を受けても多くの人の手でよみがえり、変わらない優しい眼差し、凛と立つ姿で、石巻市民だけでなく支援に訪れた多くの人たちに元気や勇気を与えたのです。

どんどん進化する石巻マンガロード

 まちの復興が進むとともにモニュメントも増えていきました。石ノ森萬画館向かいには、新たな観光拠点として「いしのまき元気いちば」と、北上川のロケーションが楽しめる堤防空間(かわまちオープンパーク)ができました。この周辺には、これまでとはちょっと趣向の異なるモニュメントが設置されています。ブロンズ(青銅製)のモニュメントで、フィギュア等を制作する造形師によって原型が作られ、石巻でしか見ることができない作品です。例えば、サイボーグ009(島村ジョー)のブロンズ(青銅製)のモニュメントは2種類あります。一つは寒河江弘氏(故人)によるモニュメントで、もう一つは齋藤毅氏によるモニュメントです。どちらもサイボーグ009(島村ジョー)ではありますが、造形師それぞれの特徴や技術が盛り込まれた作品となっています。

立町ポケットパークや、石巻駅構内にも異なるサイボーグ009(島村ジョー)のモニュメント(FRP製)が設置されていますので、ぜひ表情の違いを見比べてみてください。

石巻のまちなかでは、モニュメントだけでなく、商店街の壁やシャッターに地元の高校生やアーティストが描いた壁絵や、キャラクター柄のマンホール、キャラクターをあしらったサインなど、至るところにマンガを見つけることができます。マンガを使ってさまざまな表現を行い、まち全体をミュージアムに見立てるという「石巻マンガッタンミュージアム構想」のもと、「石巻マンガロード」は今もなお進化し続けています。

島村ジョー/齋藤毅 作

島村ジョー/寒河江弘 作

仮面ライダー1号&2号/三枝徹 作

“好き”に会いに行こう

石巻マンガロードにはさまざまなキャラクターの他にも、個性的なお店や人がたくさんいます。そしてこれからもモニュメントを増設していく予定があるとのことです。ぜひ、お気に入りのキャラクターはもちろん、皆さんの”好き”を探しに石巻マンガロードへ遊びに来てくださいね。


参考・写真提供:石巻日日新聞社

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