
《一緒に“好き”に会いにいこう|6人目|LIBOOさん》 真っ直ぐに、飾らずに、石巻にある面白さを伝えて
“好き”に会いに行こう——。石巻マンガロードの合言葉にちなんで、石巻に暮らす方々に、石巻に住んでいるからこそ出会った “好き”なものを教えてもらうこの企画。その6人目として、「自称・石巻の裏観光大使」の肩書きのもと、ある時はYouTuber兼動画編集者、またある時にはミュージシャンの立場から石巻の魅力を発信し続けるLIBOO(リブ)さんの“好き”に会いに行く。

目 次
・好きな場所:みんなの想いと音が集う「石巻BLUE RESISTANCE」
・好きな景色:まちと人々への愛着を育んだ「中央地区の道路」
・好きな食べ物:応援し、応援される人生の大先輩「二色餅」
・面白さを探し、見つけて、みんなで面白がる
好きな場所:みんなの想いと音が集う「石巻BLUE RESISTANCE」
石巻の中心市街地の一画に、周囲に軒を連ねる飲食店とは一風変わった雰囲気を漂わせる場所がある。その場所こそがLIBOOさんの“好きな場所”であるライブハウス「石巻BLUE RESISTANCE(通称・ブルレジ)」だ。東日本大震災からの復興を目指して三陸地域にライブハウスを建設する「東北ライブハウス大作戦」プロジェクトのもと、2012年10月にオープンしたライブハウスであり、これまでには地域内外のバンドだけでなく、「X JAPAN」をはじめとした日本を代表するバンドもステージに立つなど、石巻の音楽文化の中心を担う場所となっている。

「ここは、石巻を、そして音楽を想うたくさんの人たちの“念”が込もった場所なんです」。そう語るLIBOOさんも、ブルレジのステージに立ち、何度も歌声を響かせてきた一人。今でこそ「自称・石巻の裏観光大使」として、市内外の飲食店を紹介するグルメ系YouTuberのイメージも強いLIBOOさんだが、その幅広い活動のルーツには、学生時代から現在も続けている音楽がある。そして、その音楽活動の日々の中でも、ブルレジは「特別な場所」なのだという。
地元の石巻高校を卒業後上京し、「バンドマン」を夢見て東京で本格的に音楽活動に打ち込んだLIBOOさん。東京での5年間にわたるバンドマンとしての日々には苦労以上に充実感があった。しかし一方で、音楽の世界はやはり実力主義の厳しい世界。バンドメンバーの家庭の事情なども重なった末、24歳の時に夢半ばにして石巻へと戻る選択をした。
その後、石巻に暮らしながら、仙台市を中心に音楽活動していたLIBOOさんを襲ったのが2011年の東日本大震災。「津波で機材も、作曲に使っていたパソコンも何もかも流されて。ただそんな中でも、ずっと一緒だったアコースティックギターだけは助かったんです」。以降は、唯一残ったそのアコースティックギターを手に、石巻市内のステージで弾き語りをするようにもなり、のちに数々の思い出を育むことになるブルレジのステージにも導かれるように立つことになった。

「2013年5月5日でしたね。俺がブルレジのステージで初めて歌ったのは」。そこから何度となくブルレジのステージで歌声を響かせてきたが、そうした中でもLIBOOさんには特に記憶に刻まれている一夜がある。それが、2016年に開催された「唐揚げナイト」というライブイベント。このイベントは、前年に心臓病の手術を乗り越えたLIBOOさんを迎えるべく、行きつけの定食屋「楓楸栞(ふうしゅうかん)」が主催してくれたイベントだった。
「基本的に人前では泣かないようにしてるんですけどね」。退院後初のライブには、普段はライブに来ないような同級生たちに加え、これまでの音楽人生で出会ってきた仲間たちが、世代や場所を超えて集まってくれた。「もう、泣きながらなんとか歌い切って」。LIBOOさんは少し照れくさそうに、トレードマークのオレンジ色のニット帽を掻く。

そのブルレジの壁には、びっしりと木札が掲げられている。それらはこれまでブルレジに関わってきた人々が手書きした木札だ。「一枚一枚にそれぞれの想いやストーリーが詰まっているんです。大物アーティストから地元の若者まで、同じく音楽を愛して、そしてブルレジを愛している人たちの“念”みたいなものですね」とLIBOOさん。その目線の先にある天井の梁にはもちろん「LIBOO」と書かれた木札も飾られており、その文字はLIBOOさんのブルレジと音楽に対する想いの分だけ太く力強かった。

好きな景色:まちと人々への愛着を育んだ「中央地区の道路」
ミュージシャンのほか、現在はYouTuber兼動画編集者としても活動しているLIBOOさんは、石巻のまちなかの情報を発信するため、新たな動画の種を探し歩くことも多い。そして、そんな石巻を知り尽くしているLIBOOさんにもやはり、一際思い入れがある場所がある。その一つが、震災後に、いしのまき元気いちばなどが整備された中央地区周辺。その歩道を何気なく歩いていると、LIBOOさんはふと立ち止まり、「この辺一帯の道路ですね」と周囲を見渡した。
実は、LIBOOさんは2025年まで、建設会社の社員というもう一つの「顔」を持っていた。東京から戻った後に入社し、いわゆる「現場監督」として約20年間にわたり、震災以降の石巻の再開発を含めた数々の現場を支え続けてきたのである。

LIBOOさんが立ち止まったこの場所も、まさに自身が汗を流して完成まで漕ぎ着けたかつての現場。当時の様子を「道路の図面をもらって、全般の調整をするのが自分の役割でした。なので、あの頃はこの場所にできあがる光景を思いながら、一つひとつの作業を進めていましたね」と振り返る。
この中央地区の再開発事業は5年にもわたる大規模な公共工事だったが、その期間の長さの分だけ、LIBOOさんとまちの人々との距離を縮め、愛着をもたらすきっかけにもなった。近隣住民の理解のもとで工事を進めるため、商店街の一軒一軒を自ら回り、騒音や通行止めの説明を繰り返す中では、「『まちを良くしようとしているんだ』ということを住民の皆さんが理解してくれて、最後には『頑張ってね』と応援までしてくれたんです」と、まちの人々の温かさと、人々のまちに対する愛情の深さにも触れた。

こうして毎日、まちと向き合う中で強くなった石巻への想いは、建設会社を退職し、現在、動画制作会社リブプロダクション代表兼YouTuberとして活動する今でもしっかりと根付いている。「皆がそれぞれにこのまちに想いを持って働いて、一生懸命生きている。そのことに気付くことができた大切な経験でした。この経験があったからこそ、俺は今でもこうして、誰に頼まれたわけでもなく、このまちの人たちを勝手に応援しているんです」。そう噛み締めるように語った後、今では新しい日常が日々育まれている中央地区を、軽やかな足取りで再び歩き出した。
好きな食べ物:応援し、応援される人生の大先輩「二色餅」
「物心がついた頃に食べていたもので、今でも残っている味は、もしかしたらこの二色餅(ふたいろもち)だけかもしれないですね」。石巻で長年愛されてきた老舗和菓子店「二色餅」の大福を愛おしそうに手に取って、そう語るLIBOOさん。「子どもの頃の自分にとって、二色餅が家にある日はラッキーな日だったんです。昔は個包装になっていなくて、今ほど長く持たなかったので、祖父母が買ってきたものを、家族みんなでその日じゅうに食べ切るのが恒例で」と小さな大福からよみがえる家族の思い出を打ち明ける。

店内には、代名詞の紅白大福以外にも、草餅や、宮城県ならではのずんだ大福も並ぶ。その中でも、「俺はちっちゃい時から変わらず、白のこし餡派ですね。餅がすごく柔らかくて、こし餡と一緒に口の中でとろけちゃうんですよ。あんなにとろける和菓子って、そうそうないんじゃないかなあ」と、お気に入りの味は昔も今も変わらない。
今でもふとした時に二色餅が無性に食べたくなる日があり、「もはや二色餅は俺の味覚を形作ったと言っても過言じゃないと思います」と、思い入れの強さを語った後で「実は…」とLIBOOさん。「二日前にも買いに来たんですが、その日はもう売り切れていて。だから今日食べられるのが楽しみだったんです」と、少年のような屈託のない笑顔で手元の大福を見つめる。
そんな幼少からの長い付き合いである二色餅とLIBOOさんだが、ここ数年は、LIBOOさんが自身のYoutubeチャンネルで紹介したことなどを機に、単なる常連という枠を超えた関係性に発展している。「ほら、ここに」。LIBOOさんがそう指差す先の二色餅の扉には、LIBOOさんのステッカーが1枚ではなく、3枚も。 「二色餅をはじめ、昔から通って応援していたお店が、今は自分の活動を応援してくれているんです。本当に不思議な縁ですよね」。

その二色餅は、震災による店舗の被災に伴って移転した石巻駅前での営業をこのほど終え、2026年2月からは、中央地区に整備した新店舗へ移る。中央地区と言えば、LIBOOさんが再開発工事に携わった場所であり、これもまた、二色餅との不思議な縁を感じさせる。
お店を出て、LIBOOさんは「俺は、二色餅みたいでありたい、とも思うんです」とつぶやき、そして続ける。「時代が移り行く中で変わらずにいるためには、逆に変わり続ける必要があって、それはパッケージもそうですし、きっと味だってそう。大事な根っこを変えないために進化しているんだと思うんです。だから、俺もそんな人間でありたいなって」。少年時代に出会い、今も食べ続けているその手の中の柔らかな二色餅。そこにLIBOOさんは、紆余曲折を経て、今も変化の最中にいる自分自身の人生を重ねていた。

面白さを探し、見つけて、みんなで面白がる
LIBOOさんが石巻のまちなかへと向ける眼差しは、真っ直ぐでいて、かつ飾らない。「石巻は決して洗練されたおしゃれなまちではないかもしれない。でも、石巻の人たちが持つ港町特有の武骨さや、曲者ぞろいの人々のピュアさが、今はものすごく愛おしいんですよね」。だからこそ、LIBOOさんは自らの発信においても、無理に良く見せるのではなくて、ありのままの石巻の面白さを見つけ出して“真っ直ぐに飾らない”ことを大切にする。「ここにないものだってある。でも、ここにあるものもたくさんある。だから、ここにあるものを面白がって、伝えることができれば、みんなも面白がってくれると思うんです」。
かつて、夢を追うために離れ、そして夢半ばで石巻に戻って20年ほどが経った今、当時は気付いていなかった石巻の魅力にも気付けるようになった。また何よりも、今ならそれを知るために自ら動き、発信することもできる。「チャオ、LIBOOだよ!」。今日も石巻のどこかでLIBOOさんのいつもの挨拶が響く。そしてその場所では、太陽のように明るいオレンジ色のニット帽を被ったLIBOOさんが、石巻の面白い場所を見つけて、みんなに伝えようと、まん丸の笑顔を弾けさせている。

LIBOOさんが更新するYouTubeチャンネルはこちら
◆リブチャンネル〜食べたり飲んだり歌ったり〜
本記事で紹介したお店の情報はこちら
◆ 石巻BLUE RESISTANCE
◆ 二色餅
WRITTEN by 口笛書店
2019年6月、宮城県石巻市に生まれた出版社。石巻に在る出版社だから作れる本、口笛書店だから出せる本というものはなんなのか。時間をかけて模索していきながら出版活動を行っていきます。地元での出版活動のほか、関東を中心に書籍の執筆編集、ウェブコンテンツの企画編集、広告、コピーライトなど、言葉を取り巻くクリエイティブコンテンツの制作も手掛けています。
公式HP|口笛書店



